記事一覧
- 「後期高齢者医療制度」とは何か、その概要と特徴。
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(2)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(3)
- 「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置
- 「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(2)
・特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解
・人間ドック はじめての受診 4分でポイント理解
「後期高齢者医療制度」とは何か、その概要と特徴。
「後期高齢者医療制度」は、平成20年(2008年)4月からスタートした医療制度です。開始から早10年目を迎え、医療制度としても安定的に定着しつつあります。
(なお、かつて本制度の名称を「長寿医療制度」に変更する方針が示されましたが、制度の本質・内容になんらの変更もないことを鑑み、当サイトでは「後期高齢者医療制度」に統一します。現状では、「後期高齢者医療制度」単独で使用されるケースがほとんどです。)
この制度は75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と呼称し、一定の対象層として独立させ、別建ての保険システムのもとに組み入れたものです(ちなみに65歳~75歳未満の高齢者は「前期高齢者」に分類されます)。
ただし、65歳以上75歳未満でも、「寝たきり等の一定の障害がある」と広域連合から認定された方は、原則としてこの制度に含まれ、その被保険者となります(「障害認定の申請の撤回」を申し出て認められた場合を除く)。
「後期高齢者医療制度」の発足により、「後期高齢者」は、国民健康保険やサラリーマンの健康保険などの医療制度に入ったまま老人保健制度からもダブルで医療を受けられるという、いわば共同運営的なこれまでの保険システムから脱退し、新たに「後期高齢者医療制度」に加入することになりました。
国民健康保険の場合は脱退の手続きは不要で、自動的に移行となります。
なお健康保険の場合も自動移行ですが、前制度の脱退手続きについては、念のために保険者(健康保険組合など)に問い合わせてみるとよいでしょう。
これから満75歳になる方については、「75歳の誕生日から」対象となりますが、同様に特に手続き等の必要はありません。
ちなみに、「自分は脱退は嫌だ!」とごねてみたところで、75歳になった段階で後期高齢者医療制度への自動加入という扱いですから、選択の余地などありません。
通常の社会保険(健康保険・介護保険等)は職域やお住まいの市町村が保険者となり、個別に内容が決まっています。
それに対して職域等に関わりなく、(原則として)年齢のみで対象者を一本化した唯一の医療保険が、この「後期高齢者医療制度」なのです。
自動移行によって、これまでの老人保健医療受給者証や被保険者証は使えなくなります。
新しい被保険者証においては、被保険者番号も、以前の番号とは異なった新しい番号が付与されます。
後期高齢者医療制度では、「後期高齢者」一人一人が被保険者となって、75歳以上の高齢者も、今後は市町村から支給される自分自身の被保険者証を一枚、持つことになります(ただし「生活保護受給者」は被保険者からは除かれます)。
ということはその保険料も、これら後期高齢者の方が「自分で」納めることになるわけです。
世帯単位で保険料が計算される国民健康保険とは異なり、後期高齢者医療制度では「個人単位で」保険料が計算されることに注意が必要です。
年金支給分から年金の支払期ごとに、原則として該当分の保険料が自動天引き(特別徴収)されて、年金の手取額が減ることになります。
(注)平成21年度(2009年1月)からは、「原則としてすべての人の」口座振替による支払(普通徴収)が可能になりました。お住まいの市区町村窓口へ申し出るだけで、年金の自動天引きから口座振替に変更することができます。
ただし年額18万円未満(月額1万5千円未満)の年金受給者の場合は、最初から年金からの天引き対象にはなりません(納付書か口座振替による支払となります)。なお口座振替へ切り替えても、年間の保険料額は変わりません。
さて、なぜ、このような医療制度ができたのでしょうか。
そしてこの制度によって、我々の家計にはどのような影響が見込まれるのでしょうか。
これらの背景には、みなさんもご存知の通り、日本の国家財政がひっ迫するなかでの「医療費の大幅な増加」があります。
国民医療費の98%程度に相当する医療費(平成28年度)は、前年度比0.2兆円減、伸び率▲0.5%の42.1兆円。
これまで過去最高を更新し続けてきたなかで一服感こそあるものの、高止まりしたままの現状に大きな変化は見られません。
(ちなみに国民医療費は、一般に年2~3%程度の自然増が見込まれます。)
このうち「後期高齢者」層の医療費は前年度から2,167億円増えた15.3兆円となり、医療費全体の36.5%を占めています。若い人に比べて有病率が高く、治療が長期化しがちな「後期高齢者」層の医療費が全体の3分の1を優に超えており、急速に高齢化が進む日本の現状がはっきりと見てとれます。
また「後期高齢者」の一人当たり医療費は90.9万円で、現役世代の4倍以上かかっているとされます。
以前の制度では健康保険や国保などそれぞれの保険制度のなかに「後期高齢者」層が含まれていたことから、現役世代と「後期高齢者」との負担関係がわかりにくくなって、国としても膨張する医療費の抑制がやりにくい構造がずっと続いていました。
また、高齢化社会が今後とも急ピッチで進む見通しに変わりがない以上、安定的で持続可能な医療保険制度をつくらない限り、現在のシステムの部分的な手直しだけでは早晩限界がくる、との声が、大勢を占めるようになりました。
このような背景を受け、国の医療制度改革の柱のひとつとして、この"後期高齢者だけを対象層として独立させ、医療給付を集中管理する"という、世界的にもほとんど類を見ない制度がスタートしたわけです。
次のコラムから、利用者として絶対におぼえておきたい後期高齢者医療制度のポイントを見ていきます。
【2018年4月 追記】
2018年は、2年に一度行なわれる「保険料の改定時期」にあたります。
厚生労働省の集計・発表によると、2018~2019年度の「被保険者1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,857円(年間70,283円)。
前回の改定時からは1.2%のアップで、伸び率は前回に比べ小幅に留まりました。県別にみると36道府県で保険料アップ、11都府県で保険料ダウンとなる見通しです。
都道府県の広域連合において発生した「剰余金」や「財政安定化基金からの交付」というプラス要因が、「1人あたり医療給付費の伸び」や「保険料軽減特例の見直し」といったマイナス面を、抑え込むかたちとなりました。
【2017年9月1日 追記】
2017年4月(平成29年度)から、均等割額および所得割額に関わる「保険料軽減制度の改正」が実施されています(詳しくは「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置をご覧下さい)。
制度改正の影響を受ける後期高齢者のお手もとには、すでに(6~7月頃に)制度改正を反映した新保険料が記載された「保険料額決定通知」が、郵送されてきたはずです。
たとえば1年分の保険料を口座から毎月自動天引き(特別徴収)されている方の場合、変更を反映した新保険料が2017年8月分から天引きされることになります。
なお「(保険料軽減割合の縮小による)保険料の引き上げ」は、段階的に2018年(平成30年度)も実施される予定です。
【2015年6月1日 追記】
2017年4月(平成29年度)より、平成21年度以来続いてきた「国の特例による、均等割額の9割軽減措置」が廃止され、「本来の7割軽減」へと戻ることになりました。
これにより、加入者の約半数となる865万人の保険料が増加する見通しです。たとえば年金収入が年80万円の単身者の場合、月額370円が1,120円へと大きく増加します。
なお急激な保険料の負担増を避けるために、廃止は段階的に実施される予定です。
【2014年4月3日 追記】
2014年は、2年に一度行なわれる「保険料の改定時期」にあたります。
厚生労働省の発表では、2014年から2年間(2014~2015年度)の「被保険者1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,668円(年間68,016円)。
前回(2012~2013年度)から1.8%の増加となります。
47都道府県中27の都県において、保険料がアップしています。
平均保険料の減少率が最も大きいのが秋田県(3.4%減)で、増加率が最も大きいのが岩手県(6.4%増)です。ちなみに東京都は4.5%増、大阪府は増減無しとなっています。
実際の保険料額(月額)で見ると、最も高いのが東京都の8,092円/月、最も低いのが秋田県の3,205円/月となっています。
政令の改正により、2014年4月からの「保険料の年間上限額」が「57万円」へと引き上げられました(これまでは55万円)。
なお保険料の上限額は国の政令で定められますが、具体的な保険料は都道府県「後期高齢者医療広域連合」の条例で決定されるかたちになっています。
低所得者を対象とする「均等割額の軽減措置」においては、「5割軽減」「2割軽減」の対象範囲が拡大されました。これにより2014年度は、全国で約110万人の保険料負担が軽減される見込みとのことです。
また、これまで健康保険や共済組合の被保険者(組合員)の被扶養者であった人を対象とする「保険料の軽減措置」は、2014年も継続されることになりました(「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置 ご参照)。
【2013年1月8日 追記】
2012年12月の衆議院総選挙により政権が交代し、2006年の後期高齢者医療制度法案の成立時の与党であった、自民党・公明党による連立政権が発足しました。
2013年4月から予定されていた70~74歳の「前期高齢者」の医療費の窓口負担の2割への引き上げの実施がさらに先送りされ、現行の1割負担が当面継続されることとなりました(この措置はついに終了し、現在は2014年4月以降に新たに70歳になった人から、順次2割負担が適用されています)。
【2012年7月19日 追記】
2009年に当時の厚生労働大臣が表明していた「後期高齢者医療制度の廃止」ですが、このほど野田首相は、社会保障と税の一体改革関連法案(消費増税法案)が成立した場合は「今国会への法案提出を見送る」と表明しました。
後期高齢者医療制度の廃止を事実上断念するものとされ、新たな高齢者医療制度についてもこれからの議論となることから、利用者としては当面、現在の後期高齢者医療制度が安定的に続くものと判断しておいてよさそうです。
【2012年3月31日 追記】
厚生労働省の集計・発表によると、2012年度から2年間の「1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,561円(年間66,732円)になるとのことです。
現行(2010~2011年度)に比べ、5.9%(312円)増加しています。
県別にみると全国47都道府県中、43都道府県で月額保険料が上昇しており、最高は東京の7,872円(656円増)、最低は岩手の3,113円(34円減)となっています。
【2012年3月 追記】
2012年は2年に一度行なわれる「保険料の改定時期」にあたります。
政令の改正により、2012年4月からの「保険料の年間上限額」が、現在の50万円から「55万円」へと引き上げられます(保険料の上限額は、政令で定められています)。
全体の保険料を抑えるべく、高額所得者に負担増を求める趣旨とされます。
ただし具体的な保険料は、都道府県の「後期高齢者医療広域連合」が決定するため、地域によっては上限額が現行のまま据え置かれる可能性もあります。
また2012年4月からの「平均保険料」ですが、現段階の推計によれば大半の都道府県で保険料がアップ、その上昇率も2~13%程度と、県によって大きな差が生じる見通しです。
初めての改定となった2年前の全国平均の保険料上昇率は2.1%でしたので、比べると今回のアップ率の高さが目立ちます。
前回の改定時期が「後期高齢者医療制度の廃止」という論議のただ中にあったため、各都道府県の広域連合が積極的に自らの基金を取り崩して、保険料の抑制をはかったという背景があったとされます。
しかし新制度の先行きの不透明感が強い時期の今回改定においては、広域連合が基金の取り崩しに慎重なこともあり、その分も前回の上昇率との差となって表れているようです。
【2011年1月22日 追記】
報道によると、当初2013年3月に導入を予定していた下記の新制度は、予定を一年遅らせて2014年3月からの施行とする方針を、厚生労働省が明らかにしたとのことです。
かりに今通常国会で法案が提出され成立したとしても、システム改修費用の予算計上がその後になることから、時間的に間に合わないとのことです。
したがって、現行の後期高齢者医療制度の寿命は、さらに1年延びることになりました。
【2010年7月28日 追記】
2013年度に導入を予定する後期高齢者医療制度に代わる新たな制度の中間報告案が、先頃発表されました。
中間報告案のポイントですが、約1,400万人以上いる75歳以上を独立した括りで管理する現在の後期高齢者医療制度を廃止して、その約8割を「国民健康保険(国保)」、残りの約2割を健保組合や協会けんぽなどの「被用者保険」に移して再編するというものです。
保険証は、国保や被用者保険の加入者と同一のものになります。
国保加入者の医療費は、現状のまま1割負担。
被用者保険に移る場合は、(保険料を事業主と分担するため)多くの場合保険料が安くなり、また扶養家族として入る場合は自らの保険料負担が無くなります。
ただし新制度を運営する側は、「財政の運営上」は、75歳以上(もしくは65歳以上から)を区分して管理します。
とくに市町村が運営する「国保」は、「高齢者部分だけを都道府県単位で運営」するというのが現在の案です。
公費・支援金の負担割合の問題を含めて、最終報告に向けた議論がこれから進むことになります。
政府は年末までに最終報告をまとめ、2011年の通常国会に関連法案を提出して、2013年度(2013年4月)から新制度をスタートさせる意向のようです。
しかし現在、衆参がいわゆる「ねじれ国会」にあるため法案成立がどうなるか、また運営主体や保険料負担割合にかかわる議論がこれから本格化することなどを考えると、引き続きその推移を注視する必要がありそうです。
【2010年3月27日 追記】
平成22年(2010年)4月からの負担がどれくらい増えるのかが心配されていた、平成22年(2010年)度と平成23年(2011年)度の保険料の見直しですが、厚生労働省は、全国平均ベースで平成21年(2009年)度に比べ「一人当たり年間約1,300円増、率にして約2.1%アップ」の見通しである旨を明らかにしました。
下記のとおり当初の試算では14%程度の保険料アップが見込まれていましたが、各都道府県の設置する基金からの交付金や広域連合の剰余金の活用によって保険料率を抑制し、個人に及ぼす影響を当初の試算よりも低くとどめたようです。
【2009年11月24日 追記】
すでに報道等でご存じのとおり、政権交代の後に長妻厚生労働相が「後期高齢者医療制度の廃止」を明言しており、あわせて2013年度を目処に新しい制度への移行をはかる方針を示しています。
新制度の詳細についてはまだ未定ですが、現時点ではっきりしているのは、(1)従来の老人保険制度にそのまま戻ることはない、(2)後期高齢者医療制度の廃止理由として「年齢による区分から設計された保険制度に無理がある」としていることから、新制度は年齢区分を基準にした設計にはならない可能性が高い、という二点です。
“高齢者医療制度”についてご説明します。(厚生労働省)
平成20年(2008年)4月に後期高齢者医療制度がスタートしてからすでに1年半以上たっており、都道府県の後期高齢者医療広域連合や市町村窓口においても、その事務手続等にようやく慣れてきた頃合いです。
これから新制度の設計を行い必要なインフラを整えたうえでスタートするにしても、そこに至るまでの国民的コンセンサスの形成・必要資金額の手当て・他の既存の保険制度との整合性などの諸問題をクリアしていかなくてはなりません。
また国民に対する新制度の広報や現場における職員研修・保険料徴収フローの設計なども再びやり直さなくてはならず、想定する時期に間に合うかといったスケジュール面での課題もあります。
利用者としては、当面は後期高齢者医療制度が続くという前提のもとで、今後の状況の変化に注意しておく必要がありそうです。
もうひとつは、来る2010年度が、各都道府県の広域連合によって二年ごとに見直される保険料の改定時期にあたることです。
すでに厚生労働省は、全国の年間平均保険料ベースにおいて、2010年度からの新保険料は現行に比べおよそ13.8%増えるという試算を明らかにしています。
ここから都道府県ごとに金額的バラツキが生じてくることになるわけですが、支払保険料のストレートな負担増を抑えるべく国が今後打ち出してくる施策についても、注視しておきたいところです。
【2009年8月20日 追記】
2009年度の都道府県別の年間支払保険料が発表されたため、該当部分を編集・追記しました。
衆議院選挙が近づいていますが、発足から一年半近くになろうとしている後期高齢者医療制度のゆくえが選挙後の制度の存廃も含め注目されるところです。
【2009年3月23日 追記】
保険料支払いに関わる制度改正部分を追記・編集しました。
【2008年7月25日 追記】
政府が平成20年(2008年)7月に正式決定した"後期高齢者医療制度の見直し策"によって政令が改正され、平成20年度以降の保険料が見直されることとなりました。
(「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要 ご参照)
この政令改正を受けて、各都道府県の「後期高齢者医療広域連合」が対応するかたちで条例を改正し、平成20年4月の制度改正時までさかのぼって個々人の保険料を再計算したうえで、対象者には平成20年8月以降にあらためて通知されることになりそうです。
新設された「所得割の減額措置」の今年度の実施分が各広域連合の判断にゆだねられていること、また誕生日の関係などで平成20年4月以降の制度加入となった方がいることもあり、「今回の見直しによっていつからどれくらい、保険料が下がるのか」については、適用対象者のなかにおいても個人差が生じるケースがでてきそうです。
詳細は、お住まいの地域の広域連合か市町村の担当窓口に確認してみるのがよいでしょう。
【2008年6月9日 追記】
マスコミ報道等でご存知のとおり、現在は後期高齢者医療制度をめぐっての政府・与党と野党の対立が、ますます深まっている状況です。
一言でいえば、「現状の制度はこのまま維持し、保険料の減額措置を柱とする運用の改善でなんとか乗り切ろうとする政府・与党」VS「制度そのものの廃止を求めて引かない野党」、という構図になっています。
2008年6月に参議院では同制度の廃止法案が可決され、その後8月末の臨時国会に向けて継続審議入りしているものの、このままいけば、与党多数の衆議院で廃止法案が否決される公算は極めて高いでしょう。
制度の加入者からみれば、今回のゴタゴタで得られるのは、「保険料負担のいくらかの軽減」ということになりそうです。
このこと自体は、加入者の当面の負担が軽くなってよいニュース...とも言えそうですが、与野党ともに「軽減した分の穴埋めを今後どこで、どういう計画でやるのか?」については、見通しがたっていません。
また、今回の保険料減額措置により、予算ベースで2008年度は560億円、さらに2009年度以降は毎年330億円が必要と見込まれています。その資金も、一体どうまかなっていくつもりなのでしょうか。
「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(1)でも記したとおり、最終的には「75歳以上の後期高齢者の負担増、すなわち保険料の増額で埋めるか、あるいは負担増を抑制するために、後期高齢者が受けられる医療の水準を下げていくより他にない」、となる可能性が極めて大きいと思われます。
そのたびに政治・社会問題となり、低所得者への追加支援策などがまた場当たり的に打ち出され、問題の解決が先のばしにされるだけでは、いずれ制度として立ち行かなくなるのは時間の問題でしょう。
今は、目先の保険料が上がった・下がったという面が、少しクローズアップされすぎの感があります。
「将来の後期高齢者層」を形成することになる前期高齢者・現役世代・そして若者層にとっても、今後の財源不足とその確保がどうなるのか、またどうすべきかについて、長い目線で注視する必要がありそうです。
【2008年4月10日 追記】
新制度がスタートした平成20年4月に入ってから、保険証が手もとに届いていなかったり、受け取ったものの新制度の保険証とは気づかずに廃棄してしまうケースが、全国的に発生しているようです。
このように、もし誤って廃棄してしまった場合は、市区町村に申請を行って、再交付してもらうことに
なります。
また厚生労働省は、このように新保険証が手もとになかったり、あるいは誤って捨ててしまった方のために、当分の間は古い国民健康保険証などで代用できるよう(つまり、窓口でいったん医療費全額を立替て支払う必要はなく、原則1割負担で済むことになります)、全国の医療機関に要請したとのことです。
さらに、すでに古い保険証もお手もとになく、また新しい保険証もない場合には、運転免許証などの生年月日を確認できる書類があれば、当面は従来どおり、原則1割負担で受診できるよう取りはからう、とのことです。
厚生労働省も、本制度の周知徹底が弱かったことを反省してか、柔軟な対応をとってくれていますので、新しい保険証がないので病院にはいけない...ということはまったくありませんので、この点はおぼえておきましょう。