記事一覧
- 「後期高齢者医療制度」とは何か、その概要と特徴。
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(2)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(3)
- 「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置
- 「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(2)
・特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解
・人間ドック はじめての受診 4分でポイント理解
「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(1)
「後期高齢者医療制度」がスタートしてはや10年目に入りましたが、今後起こりうると懸念される問題点について、利用者の立場において知っておきたいことを、いくつかあげておきましょう。
この制度が発足した背景には、膨張する医療費を抑制するための管理をやり易くする狙いから、大きな割合を占めている75歳以上を「後期高齢者」とひとくくりにして分類し、ターゲットを絞ったうえで医療給付の抑制をやりやすくしようとする国の思惑があります。
(その一方で、分母を大きくしてリスクを分散させるのが保険のあり方であるにもかかわらず、病気になりやすく医療費が大きくかかるはずの後期高齢者層を分離して制度をつくったことや、後期高齢者自身が負担する保険料が財源全体のわずか1割にすぎないことなどが「保険制度としてのバランスを欠いている」という批判も、根強く残っています。)
そもそも、「後期高齢者への医療給付」は、後期高齢者自身の保険料で1割、その他の医療保険者から「後期高齢者支援金」として4割、そして残りの5割を国や県・市町村からの「公費」としてまかなう仕組みになっています。
したがって今後、後期高齢者の絶対数が増えていったときに(確実にそうなるのですが)、対応して医療給付費もまた増えていくわけですが、その増加分をこの3グループのどこで増やしていくのか?という問題になってきます。
「財政安定化基金」等のいわば緩和装置が用意されているものの、国の財政が厳しいなか、「公費」の部分で大きく増やして対応していくことは今後ますます難しくなるでしょうし、財務省も厳しい態度でその抑制を迫ってくるでしょう。
現役世代が中核となる「後期高齢者支援金」の部分も、高齢化が進むなかで、将来的には全体のパイが自然と減少する方向になります。
そのような状況のもとで、唯一パイが大きくなる一方の「後期高齢者」において保険料の負担割合を全体の1~2割のまま据え置いてがんばった場合、膨れ上がる医療費を制度全体としてもまかなえなくなるであろうことは、自明です。
一般に一人当たりの医療給付費は、年2%前後のペースで上昇するとされます。
したがって、2年ごとの保険料の見直し時においては、必然的に保険料の値上げに直結する可能性が高くなります。
また、たとえ直接的な保険料の上昇が無くとも、これまで政策的に用意されてきた軽減措置の軽減幅(率)の段階的な縮小・廃止が進めば、利用者にとっては実質的な負担増につながります(「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置 ご参照)。
【2018年4月 追記】
厚生労働省の集計・発表によると、2018~2019年度の被保険者の保険料負担は、全国平均で年間70,283円(1ヶ月あたり5,857円)となる見込みです。
都道府県の広域連合において発生した「剰余金」や「財政安定化基金からの交付」というプラス要因が、「1人あたり医療給付費の伸び」や「保険料軽減特例の見直し」といったマイナス面を抑え込み、前回改定に比べ伸び率は1.2%増と小幅に留まりました。
【2016年4月 追記】
厚生労働省の集計・発表によると、2016~2017年度の被保険者「1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,659円(年間で67,904円)の見込みです。
1人あたり医療給付費の増加傾向が依然続くなか、前回(2014~2015年度)と比べてほぼ横ばい(全国平均保険料の上昇率は0.5%増)の見通しとなる主な理由は、保険料増加抑制を目的に各都道府県に設置された「財政安定化基金」の交付金の影響によるものです。
【2014年4月 追記】
厚生労働省の集計・発表では、2014~2015年度の被保険者「1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,668円(年間で68,016円)になるとのことです。
前回(2012~2013年度)に比べて負担額が下がる県もあるものの、全国平均保険料の上昇率は1.8%増となりました。
全国47都道府県中27の都県において、保険料が上昇しています。
【2012年3月 追記】
厚生労働省の集計・発表によると、2012~2013年度の「1人あたり月額保険料の全国平均額」は5,561円(年間で66,732円)になるとのことです。
全国47都道府県中、43都道府県で月額保険料が上昇しました。
また、全国平均保険料の上昇率は5.9%になりました。
初めての改定となった2年前は、各都道府県の広域連合が積極的に自らの基金を取り崩して保険料の抑制をはかったこともあり、全国平均保険料の上昇率は2.1%に留まっていました。
今回の改定における全国平均保険料の上昇率の高さが、際立つ結果となっています。
後期高齢者医療広域連合を擁する都道府県としては、医療給付そのものの抑制にも、並行して動かざるを得なくなってきます。
これは、具体的には医療機関に支払う診療報酬を引き下げることで達成されるので、それはすなわち高齢者が受けられる医療に制限が加わる、言い換えれば高齢者が受けられる医療水準の質が今後下がってくることを意味するわけです。