記事一覧
- 「後期高齢者医療制度」とは何か、その概要と特徴。
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(2)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(3)
- 「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置
- 「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(1)
- 「後期高齢者医療制度」、利用者として心配な問題点(2)
・特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解
・人間ドック はじめての受診 4分でポイント理解
「後期高齢者医療制度」、保険料決定の仕組みと軽減措置
「後期高齢者医療制度」における保険料と保険料率は、各都道府県において運営主体となる「後期高齢者医療広域連合」が、「財政的負担能力」と「地域の医療費の水準」に応じて、決めていくことになります。
そして、制度加入者が個々に支払う保険料は、負担金額が平等で一律となる「均等割額」の部分と、収入に比例し金額が変わってくる「所得割額」の、二つの合計額で決まってきます。
「保険料」=「均等割額」+「所得割額」 ということですね。
それでは、それぞれについて、以下説明します。
まずは「均等割額」ですが、これは「所得に関係なく、加入者が平等に支払う定額部分」となります。
この金額も、都道府県ごとに異なっているのですが、だいたい一人当たり3万円台後半~4万円台後半といったところです。
ちなみに、この「均等割額」の部分については、低所得の世帯を対象に、その世帯の所得に応じて数段階に分けて減額するという「均等割額の軽減措置」が用意されています。
(注1)平成21年度(2009年1月)から「9割軽減」が新たに設けられ、「9割・8.5割(本来7割だが、国の特例措置による)・5割・2割」の、「四段階」に分けての減額(軽減措置)となりました。
9割軽減は「75歳以上の被保険者全員の年金収入が、80万円以下(他に所得がない場合)の世帯」が対象となります。
(注2)平成24年度からは、低所得者を対象とする「均等割額の軽減措置」において、「5割軽減」「2割軽減」の対象範囲も拡大されました。
(注3)平成29年度(2017年4月)より、平成21年度以来続いてきたこの「9割軽減」の特例措置は廃止され、本来の7割軽減に戻ることになりました。これにより、加入者の約半数となる865万人の保険料が増加する見通しです。なお急激な保険料の負担増を避けるべく、廃止は段階的に実施の予定です。
(注4)(注3)で述べたとおり、平成29年度(2017年4月)から、この「制度加入の前日までに健康保険等の被扶養者だった人(元被扶養者)」向けに用意されていた「均等割額の軽減措置」が変わり、「9割軽減」→「7割軽減」になりました(さらに平成30年度(2018年4月)からは「7割軽減」→「5割軽減」になります)。
これによって対象者は月額ベースで約750円(全国平均)、保険料が増額となります。
ただし世帯の所得が低く均等割額の「9割・8.5割軽減」の対象となる元被扶養者は、引き続きその軽減措置が受けられるので、お住まいの都道府県の後期高齢者医療広域連合に照会してみるとよいでしょう。
後期高齢者医療制度は個人ごとに保険料がかかって保険証が発行されているものの、「均等割額の軽減措置」は「世帯単位で」判断され行われている点には、注意が必要です。
なお、世帯内の収入の単純合計額が、すなわち(所得税法上の収入金額である)世帯所得の合計額になるとは限りませんので、お住まいの市区町村に照会するほうがよいでしょう。
この「均等割額の軽減措置」を受けるための申請は特に必要無く、「後期高齢者医療広域連合」が被保険者数や基準金額に照らして、自動的に判定を行ってくれます。
年金収入額が一定額(153万円)以下で他に所得が無い場合、「均等割額のみの」保険料となります(「所得割額」は課されません)。
ただし東京都は、より手厚い措置となっています(「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要 をご参照。)
次に「所得割額」ですが、「所得-33万円(基礎控除額)」に、所得割率(%)を掛けて計算します。
ここでいう「所得」は、「年金などの収入額-必要経費(公的年金等控除額や給与所得控除額等)」であり、収入額と必ずしも一致しないので注意しましょう。
また所得割額は均等割額と異なり、世帯ではなく「加入者個人の所得」で判断されることには、再度注意してください。
自分の住む都道府県の所得割率がどう定められているか、また低所得者の方のための「所得割額の軽減措置」も用意されているので、お住いの地域の後期高齢者医療広域連合に問い合わせてみるのがよいでしょう。
(注)この個人の年収に応じて変わる所得割額についても、「所得割額の軽減措置」が用意されていますが、これも平成29年度(2017年4月)から一定の方を対象とする基準変更がありました。
具体的には年収が約153~211万の方にかかる所得割額の軽減率が、「5割軽減」→「2割軽減」になりました。
厚生労働省によれば、この変更で全国で約160万人の所得割額について、月額で最大1,320円(全国平均)の増額となります。
なおこの所得割額の2割軽減措置も、平成30年度(2018年4月)からは無くなります(もともと法令上の構成も「平成29年度までは特例として軽減措置を用意する」というものでした)。
以上の「均等割額」と「所得割額」の合計額で、年間の保険料が決まってきます。
ちなみに、「所得割額」の金額がどんなに高くても(つまり、どんなに所得が高い人であっても)、保険料は最高で年額57万円となっています。
【2014年4月 追記】
政令の改正により、平成26年度から「保険料の年間上限額」が、現在の55万円から「57万円」へと引き上げられました(保険料の上限額は国の政令で定められますが、具体的な保険料は都道府県「後期高齢者医療広域連合」の条例で決定されます)。
全体の保険料を抑えるべく、高額所得者に負担増を求める趣旨とされます。ちなみに制度開始時(平成20年)の年間上限額は、50万円でした。
また、「後期高齢者医療制度」、利用者が覚えておくべきポイント(1) でも書いたとおり、この制度においては、加入者である「後期高齢者」一人一人が保険料を負担する仕組みになっています。
したがって、「これまで健康保険や共済組合の被保険者(組合員)の被扶養者となっていて、保険料負担が無かった75歳以上」に新たに負担が発生することになるため、その人たちを対象とした「保険料の軽減措置」が設けられています。
制度の発足時にいろいろ批判を受けたこともあってか、「(サラリーマンの夫や息子などに扶養されていた)被扶養者のみ」を対象にした「負担凍結措置」が追加されました。
これによって、平成20年(2008年)4月から9月までの半年間は保険料の徴収が免除され、平成20年(2008年)10月から平成21年(2009年)3月までの半年間は、「均等割額の9割」が軽減されていました。
この「負担凍結措置」は政策的に延長が重ねられてきたものの、前述の(注4)で記したとおり、健康保険等の被扶養者の均等割額は平成29年(2017年)現在、「7割軽減」まで縮小されています(平成30年度以降は「5割軽減」になります)。
つまり軽減幅こそ縮小しつつあるものの、これまで被扶養者として保険料負担がなかった75歳以上の方は、後期高齢者医療制度によって初めて保険料を負担するわけですが、軽減措置の適用によって当面の保険料負担はかなり軽減される、ということです。
なお、これらの方が低所得者で上記の前半部分で説明した世帯所得の要件にもあてはまる場合は、そちらの軽減措置が優先的に適用されます。
【2008年7月25日追記】
平成20年(2008年)7月、これまで政府・与党内で検討されていた"後期高齢者医療制度の見直し策"が正式決定し、政令が改正されました。
「後期高齢者医療制度」、追加見直し策の概要 をご参照ください。